異業種と協業してきた日々

現在の本業であるプログラマーと並行し、料理研究一家「古川家」の活動を開始して今年で4年目になりました。

プログラマーとして業務システムなどを受託開発してきた経験は、そもそも異業種交流のようなものだったのですが、今度は自分から異業種の世界に出て行くという動き方になっています。

しかも持って行くのはITそのものだけでなく、要件定義や運用設計などを手がけて培ってきた情報処理技術です。同業者からは当たり前の行為や知見であったとしても、異業種の世界では特異な存在らしく、その点が強みとなっています。

「くらし」を「なりわい」に

古川家として活動する核の1つには、日々の暮らし、ライフスタイルをそのままビジネスにできるか?という挑戦があります。

料理研究一家と名乗るのは、食卓を彩り、支える、家族という存在が欠かせず、食卓を起点として、それぞれの得意なことを生かし、力を合わせて活動していくというビジョンがあるためです。

日々繰り返される家族との暮らしがとても大切な事だからこそ、消費するのではなく生産していく、そして新たな可能性に向けて投資していきたい。そう考えることで、自分の活かし方、活かされ方への意識が大きく変わりました。

「専門家」から「兼業化」へ

専門家から兼業家へ

プログラマー、SIer、ソフトウェアエンジニア、呼び名は様々あれど未来についてはなぜか暗い話が付きまといがちです。

誇りを持って仕事をし、技術の研鑽に励む日々にも関わらずです。

AIに仕事を奪われる、35歳定年説、海外人材に駆逐される、ネガティブな未来は枚挙に暇がありません。

では、これからどう歩んでいくのか?

プログラマーとしての歩み方にはいくつかあると思いますが、すぐ思い浮かべるのは、新規テクノロジーを生み出し、世間に広めることで人々のライフスタイルそのものが変化する道かと思います。

クラウドやスマートフォンが良い例ですが、世界が一変します。

もう1つは、既存テクノロジーを別分野に適用する方法です。私の場合は、テクノロジーというより人材そのものを応用するという考え方です。これが兼業を指します。

プログラマーでありながら料理研究のような、新たな業に取り組むというスタイルです。規模は小さいのですが、即行動できること、少額投資で済むというのがメリットだと思います。

コンピューターを軸にした情報処理技術を、食という文脈から別業種に適用していくのです。食は裾野が広く、飲食店だけでなく様々な文脈で登場します。そこが魅力であり可能性が大きいと考えています。

当たり前になってしまっているものだからこそ、価値を再発見していきたいという思いも含め、兼業していくことを選びました。

コミュニケーションは不可視コスト

別業種と関わるということは知識交換が必要になります。自分の技術が有用だと分かってもらうよりも、相手の実現したいことや暗黙知となっていることなどを掘り起こして、接点を探しながら相手の知識をこちらの血肉にしていくことが肝要です。

だからこそ、コミュニケーションは必須ですし、とても重要と言えます。

ですが、適切なコミュニケーション設計を行わないと、認識の齟齬や情報の混乱によってストレスばかりになり、プロジェクトそのものが止まったり、最悪の場合は解散となります。

予算、納期、ビジョン。プロジェクトを進める上で確かに重要なものですが、どのようなコミュニケーションをとって進めていくか最初に合意するというのは、同じぐらい重要だと経験から感じています。

かと言って、とりあえず話し合おう、集まろう、アドバイスを求めようを繰り返すのは本末転倒です。ここでのポイントは、コミュニケーションもコストの一種だと考えて、少ない回数にしたり、関係者を最小限にしたりと、削減できた方が良いものという視点です。

協業プロジェクトでは、他のメンバーが本業を持っていたり、案件の掛け持ちをしていることもよくあるため、なかなか進まないことがままあります。

それを問題と捉えるのではなく、必要条件と考えてコミュニケーション設計をした方が、私の場合はスムーズでした。

運用・知識・心理、3つのハードル

3つのハードル

では、こういうツールを使いましょう、こういう運用をしましょうとなった時に出てくるハードルがあります。

プログラマーとしては、このツールを使えば問題をクリアできるなと思いつくのですが、それがこのメンバーに向いているかは別問題ですし、根付くかどうかはその後の動き方にもよります。

まず見えてくるのは知識のハードルです。ITになれた人にとっては当たり前の感覚が、別業種では通らないというのはよくある話です。主な原因は情報の非対称性、つまり得意な知識に差があることです。

ここは先ほどでいう、異業種間の知識交換を積極的に行うことで解消できるのですが、次に出てくる心理的ハードルが立ちはだかります。

ITヘの苦手意識、トラウマとも言える過去の失敗や恐怖心が、知識交換に対する意欲を削いでおり、これが根本の原因であることが多々ありました。

まず最初に越えなければならないのは、この心理的ハードルだと考えています。

既知をもって未知に踏み込む

未知と既知

では苦手意識や恐怖心の根底には何があるのでしょうか?私はそれを未知だと考えています。

知らない、分からない、経験がない、そういう状態が漠然とした不安になり、過去の経験と相まって苦手意識や恐怖心になっているようなのです。

新しいツールを使いましょう、それにはこういうメリットがあってと説明するのは、こちらの領分ですから難しくありません。ですが、いかに合理的な説明であっても相手が受け入れるとは限りません。

1つ自分の中で良い方法だと手応えがあったのは、既知の方法をとるということです。知っている、分かっている、経験があるということは、心理的距離を近く感じるため、抵抗感が薄れたり、安心できるという可能性が高くなります。

例えば、初めて使うツールなら対面で説明しながら動かしてみる、相手が1人で試すのは不安そうなら自分が相談窓口となる、相手にとって未知のことに対して、相手にとって既知の方法をとるとハードルを越えていけます。

初めて使うツールをメールで説明する、これはハードルを越える可能性が低くなります。悪手とは言えませんが、他に既知の方法がないか検討する余地があるのではないでしょうか。

誰のための技術なのか

技術があるとして、誰を中心にして考えるのか?そこが大きな分岐点だと考えています。

職業柄、新しい技術を試し、既存の技術を研鑽するというのは現役でいる限り避けられません。ただ、技術そのものは手段にすぎないというのが私の方針です。

もちろん技術を目的にするというのも楽しい一面があります。ですが、自分だけ喜んでいても前に進むことはできないとも実感しています。

様々な業種、そこで働く人たちがいて、歯車の大きさやスピードも様々です。新規テクノロジーは、それそのものが大きな歯車と言えます。なので強制的に周りを動かしてしまう力を持っており、それによって世界が変わってきたというのは、歴史を見れば明らかです。

兼業という私のアプローチは、潤滑油のようなものです。少し違うのは、存在や意味を知ることで、元々の歯車が加速するだけでなく、歯車そのものが大きく力強くなる可能性を持っている点です。

異業種へと踏み込み、方々で歯車を加速させたり、力強くすることで、世界全体が加速していけるのではと、私は考えています。

また次回に期待して

各地に散らばるCPIエバンジェリストが一堂に会するというのは、発表者側としても刺激になります。

1年に1回というのは、持ち寄ってこれる情報も濃くなっているので、ちょうどいいのではないでしょうか。

また来年、新たな事例や学びを持って、このイベントに臨めたらと思っています。

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