休日分散の動きが大手企業から順に実施されている。定休日が土・日という風習が変わっていくかもしれない。
以前、ひょんなことから定休日について調べたとき、なぜ美容院は月曜日に休むのかを知った。

東京では火曜定休の店が多いが、全国的には、やはり月曜定休が主流らしい。
では、そもそもなぜ月曜が定休日になったのか。全日本美容業生活衛生同業組合連合会に聞いた。
「ご指摘の通り、全国的には月曜定休が多いんですが、それはずいぶん昔、戦前の電力事情がよくない時代からのようなんです」
と言うのは、広報担当者。

かつてはコールドパーマなどがなく、髪に何十本も電極をつける「電髪(でんぱつ)」というパーマが主流だったそうで、美容室=電気を大量に使う場所とみなされていたそうだ。
「そこで、電力の供給にあわせて、休日の後、つまり、月曜には電気をたくさん使うものをストップしようということで、美容院を休みにすることになったと言われています」
ただし、これはあくまで憶測で、本当かどうかは不明とのこと。ちなみに、美容院の定休日は、かつて月曜定休だった百貨店にあわせているという説もあるようだ。

諸説紛々のようだが、電力事情について戦前まで遡ることになった。当然、潤沢な電力が今のようにあるわけがない。

「定休日」がきっちり決められたのは、昭和35年前後。
「『適正化規定』という法律に基づいて、都道府県ごとに、組合が定休日や料金、営業時間などを決めることになったんです」
ただし、これも今では「公正取引委員会」の指導により、完全に自由になっている。つまり、いつ休んでも、休まなくてもいいわけなのだが、それでも月曜定休が多い理由は、
「都道府県ごとに決まっていた頃のなごりでしょうね」

「なごり」という慣性の上に私たちは暮らしている

今年の2月、ちょうど青森県弘前市では、弘前城築城400年を記念して、江戸時代の頃の弘前(当時は津軽藩)の殿様の食事を再現するという催しがあった。料理の復元を担当した、さくら亭の料理長は、父の旧くからの友人でもある。
保存性、味、もてなし、といった一度にすべて満点にするのは難しい要素を、見事にバランスを取りながら昔は食事をしていたことを体験できた。
特に現代は減塩志向なので、保存に使う塩分量はまったく違う。刺身につけるタレも、醤油ではなく煮切り酒を利用していたりと、最後まで興味が尽きなかった。

幼少から食べている食事、そして郷土料理と呼ばれている食事を振り返ってみると、江戸時代にかなりのものが定着し、その「なごり」として現代に残っていることもよくわかった。
定着した風習というものは、なかなかに覆りにくく、それが社会に浸透することで「伝統」なり「文化」となるのだろう。

風習という前提は時に危険

プログラマとして様々な生産活動をするに当たり、「思想」「志向」に触れる機会は多い。これらを知り、学ぶときに気をつけるのは、鵜呑みにせずよく咀嚼してから、自分の考えに組み込むことだ。
それに時間がかかるのは良いことであり、重要な体力づくりである。余談だが、プログラマーではなく、プログラマとかサーバとか記述するのも、とある風習というか制約によるなごりだと、先輩に習ったことがある。

これまで点だった知識が線としてつながる体験が増えるなか、大事だと感じるのは起源を知ることだ。不思議なことに、高度な概念も起源は実にシンプルだったりする。「そんなこと!?」と思うほどに。特に風習の起源は、大したものでなかったりするのも興味深い。
「思想」「志向」の源泉が実はある「風習」から来ている可能性をたぐるのは、思考の助け、起源を知る機会になる。そもそも、その風習(前提)は本当に必要だったのか?という投げかけが、新たな切り口となる。